なぜ組織の意思決定基準をつくるのは難しいか

なぜ組織の意思決定基準をつくるのは難しいか

組織の意思決定の基準、例えば開発組織でいうとスピードに重きを置くか、質に重きを置くかなどを決めるのはなぜ難しいのか考えてみた。多分下記が原因なんだと思う。

  • 意思決定は基本ケースバイケースなのでなにを重要視する!などの宣言は意味がない。重要なのはそのラインをどこに置くか。
  • 組織は日々複数の意思決定を行っており、人によって思い浮かべる事象がずれると話が噛み合わない。ケースバイケースなのでAのときにこれを優先した意思決定をしたほうがいいねと話さないとずれる。
  • なにか問題が起こったときに浮かぶ解決策のいい面だけ見がち。すべての意思決定はトレードオフなので意思決定の際には悪い面も許容するという意思決定と同義と認識する。

もうちょい細かくまとめてみる。

なにを重要視する!みたいな相対指標のないものは意味がない

例えば開発組織で質を重視しようという方針を打ち出したとする。実際には組織はいろんなことを行っており、時にはスケジュール重視で出さざる負えない場合もある。このとき質を重視しようといった方針は反故にされたように見えなくもない。

ただ実際には意思決定の際に絶対にこの通りにやるというのは現実的にはありえない。なによりも優先する、こういう場合には優先するなどラインをどこに置くかという話にしかならない。そしてこのラインは方針の発表ではなく実際の意思決定ですり合わせていくしかない。実際に組織の運営を行い、このケースの場合、質を重視してスケジュールを伸ばしましたという事例がチーム全体に基準を作る。裁判で判例を作るのと似ているかもしれない。

人によって思い浮かべる事象が違う

これも基準づくりで難しいところで実際には組織はいくつもの行動と意思決定をしている。基準を話し合うときにAさんは事象Bを思い浮かべていやこの組織はスケジュール重視だから質を重視しようといい、Cさんは事象Dを思い浮かべて質重視すぎるからスケジュールをもうちょい守ろうというと話が噛み合わない。

組織の基準を話すときは前述したとおり、ラインをどこに置くかという話にしかならないのでまず事例を揃えてその事例の際にはここにラインを置こうというのを丁寧に積み上げていくしかない。

問題が起こったときに浮かんだ解決策はいい面しか見えない

これは基準を決める時というより基準がずれる可能性の高い場面だがなにか問題が起こったときに基準をこう変えようというとその基準のいい面しか見えず、結局数週間後にまた戻したりする事が多い。

例えばさっきの事例でいうと質重視で進めていたらスケジュールが破綻してとんでもなくかかったとする。で、それを問題視してもうちょいスケジュールを組もうといったらたいていスケジュールを守れるようになるというメリットを大きく見てしまうが実際にはもちろん仕様を削ったりするトレードオフが発生する。

なにか問題が起こったとき、こういったトレードオフを意識しないと今度は満足な仕様でだせないと不満が出て最初に戻る。意思決定は基本トレードオフでどれを取るかという話がほとんど。

意思決定する人間が人からあがってくる意見でなく事象をみないとぶれる

ここまで書いたが基本組織の基準は発令で決まるのではなく、実際の運営時に下す意思決定でしか生まれない。なにを言ったかではなく、行動にしか説得力は生まれない。そのため日々の意思決定がかなり重要だが意思決定する人間が事象を見ずに現場からあがってくる意見のみを見るとブレる。意思決定者が自身でも事象を分析し、人と話すときは事例や基準を揃え、最終的に自分のなかで引いたラインをもとに意思決定していく、その意思決定自体が基準になっていく。

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